記憶に残る樹々たち
はじめまして、こんにちは。ガーデナーズ協会の野村と申します。
今月は、関西の大阪より私が担当させて頂きます。
暑い夏を超え、秋も少しずつ深まりを見せながら、季節の移ろいを感じる今日この頃です。
この季節の感じ方は、人それぞれいろいろな感覚をお持ちの事と思います。
その感覚の変化に気付きながら、私たちは次の季節の準備を始めていきます。
外を眺めますと暑い夏を必死に耐えてきた樹木や草花たちも、この季節の移ろいを身体で感じ、
我々人間と同じように次の季節に対応する為の冬の準備、そして来年の準備に入っていきます。
その変化の様は、時折自然の美しさとして季節を彩ってくれています。
丁度、この時期になると街路樹の葉が色づき始めます。
全国各地の様々な場所で、皆様の記憶に残るそんな街路樹があると思います。
ここ大阪でも、秋の季節をきれいに彩る街路として代表的な場所があります。
御堂筋のいちょう並木です。少し紹介させて頂きます。
この街路樹は、昭和12年に御堂筋が完成した際に一緒に植樹されました。
当初は、プラタナスとイチョウの折衷案で範囲を分けて植えられていたそうですが、
現在はイチョウに全て植え替えられています。
距離は、大阪駅から難波までの約4Kmほどあり、オフィス街の真ん中を突っ切るように街路樹が伸びています。
資料(大阪市建設局公園緑化部協働課調べH25.3月時点)によるとイチョウ総数は約949本で、
うち雌木約250本となっております。このいちょう並木は、大阪を代表する街路として市の指定文化財にも
指定されています。
私も学生の頃は、この御堂筋をよく歩きました。夏はイチョウの木陰が涼やかで、
秋は黄葉の鮮やかさと銀杏の独特の匂いが印象的で、御堂筋といえばイチョウと思えるほど
記憶に刻まれた樹々であり、街路樹となっております。
さて、毎年のように樹齢に至った古い株は新しく植え替えられて景観は維持されておりますが、
近年においてイチョウの雌株に実る銀杏の処理や匂いなどの問題があり、雄株に植え替えられる
ようになっているそうです。将来的には、全て雄株に変ってしまうかもしれないとの事です。
この銀杏の匂いは独特なもので不快を示される方が多い様です。
この匂いを感じる嗅覚は、実は五感の中でも特殊な存在なのです。脳のメカニズムが全て解明
されている訳ではありませんが、脳に本能的に直接作用するこの匂いの記憶は長い時間
薄れないと言われております。
私の中では、昔の思い出を呼び起してくれる、記憶を辿れる、このイチョウの匂いがその場所で
感じられなくなるのは、少し寂しい気持ちでもあります。
今年もまた記憶を辿りにぷらっと御堂筋へ歩きに行きたいと思います。
このように皆様には、記憶に残っている植物は身近に何かありますか?
匂いはもちろん、視覚的な変化なども身近な植物たちは、こちらから歩み寄ればきっと何かを
教えてくれると思います。そんな、人と植物が程よい関係を保てる為の方法などを
今後協会よりいろいろお伝え出来れば幸いです。